2006年08月16日
カブール便り(その14)2004年3月19日
草の根無償資金協力は、小規模だが即効的で、やりようによっては現地のニーズに十分あうだけでなく、現地との協力の下に我々の意思も伝えられる協力方式である。カブール便り(その14)は、そのような支援の様子を伝える。
K様、
今週は、草の根無償資金協力によるプロジェクトの完工式や着工式のために一泊二日でジャララバード、日帰りでガズニに行ってきました。ジャララバードは、日本で言うともう初夏の気候で、ガズニの方は杏の花が咲き誇って春らしさが伺えました。両地の共通点は、どちらも幹線道路を除き道路が舗装されておらず埃っぽいことと、会う人皆が口々に復旧・復興を求めていることでした。
ジャララバードは、カブールの東約150キロに位置し、パキスタンのペシャワールに抜ける街道沿い、人口約40万人の最大の都市です。同市が県庁所在地となっているナンガルハール県を含む東部4県の農産物が集積され、出荷される結節点に位置しています。一方、ガズニ市は、カブールから南150キロに位置し、昨年暮れ一次舗装が完成したカブール・カンダハール道路沿いにあります。その西部の山には雪が積もりその水を利用した農業が盛んなところです。しかし、そのようなジャララバードやガズニ両市の近郊、或いは市内においてもまだ復興の果実が届いていないのです。
今回のジャララバード出張では、同市の市街すぐ北側を流れるカブール川に架かるベスード橋の修復及び同橋左右二箇所の護岸工事の完工式、ジャララバード市の隣のカマ郡の郡道路修復事業着工式、それに地雷除去ブルドーザー供与式に出席しました。ガズニへの出張では、ガズニ市への途中にあるワルダック県サイダバード郡とガズニ市内の四女学校の完工式乃至着工式、更にガズニ市内のケニク橋の修復事業完工式に出席しました。
ベスード橋は、ジャララバード市と北部二県を結ぶ国道が通る500メートル以上はあろうかという橋です。この橋の欄干と歩道が戦乱で破壊され、歩行者やロバが落ちて死者まで出ていたのです。カブール川は増水すると水流が早く、それに対して河岸は土でできており激しい水流で削られ河岸沿いの農村地帯が洪水に襲われることもしばしばだったそうです。
またケニク橋は、ガズニ市の真ん中を流れる幅30メートルほどの川を渡す橋で、これも戦乱で完全に破壊され架橋を板で渡しただけだったそうです。川の両岸は商店(といっても掘っ立て小屋のように見えますが)が建ち並ぶ町の商業中心地とも言えます。
更にカマ郡は、ジャララバード市とは、筑後で言えば久留米市と浮羽郡と同様の地理関係にありますが、その中心の村まで行くのに何と1時間15分もかかってしまいました。距離があるのではなく道がガタガタで速く走れないのです。今回は郡内の村と村とを結ぶ道路約7キロの修復だけですが、それだけでもカマ郡の豊富な農産物を大事に輸送することに役に立つでしょう。
地雷除去ブルドーザーは、人手だけでは処理が困難な地雷原でかつ農耕地に行く途中の地の地雷除去に大きな力を発揮してくれるでしょう。ジャララバード近郊は農村地帯で今は皆畑に働きにでます。しかし、その途中に思わぬ地雷原が横たわっているのです。
四女学校のうち三校は、女子も通える学校です。ワルダック県で完工した女学校は、同県最初の女学校です。このようにカブールに近い場所でも女子の教育に対する偏見は大きいものがあります。
このような状況の中で草の根無償資金協力は効果的です。プロジェクト一件あたりの協力額は一千万円以内と定められていますが、大使館担当官が自ら現場に赴き現地関係者と協議し、相応しい案件とわかれば、現地関係者からの申請を迅速に外務本省に送付、外務本省の承認を得て、契約書を交わした後すぐに工事に取りかかることができます。地方へ迅速に目に見える復興の果実を届けるという趣旨に最もかなった協力のやり方ができるのです。
アフガニスタンにおいて平成15年財政年度中(つまり昨年4月1日から今年3月31日まで)に承認を得られた草の根無償資金協力プロジェクトは合計144件、予算規模は約1200万ドルになりました。この144件を含め2002年1月の東京会議以降約200件のプロジェクトを、アフガニスタン32県中28県で行うことになりました。
しかし、完工式や着工式に参加した市や村の有力者達は、口々にもっと改善が必要だと言います。確かにその通りです。カマ郡の人々やガズニ市域にありながら幹線道路から離れ車で40分もかけなければ行けない場所にある女学校関係者が村の道を良くしたいという気持ちは、小学校の頃いつになったら学校からの道が舗装されるのだろうと指折り数えて待っていた私にはよくわかります。護岸工事は、もっと長い距離行う必要があります。今回は橋付近のわずか300メートルでした。23年間の戦乱で補修されていない灌漑用水路を整備し、人口増加と可耕地の増加のために井戸を掘り、新たな用水路を掘削する必要もあるでしょう。未だテントで勉強している子供達、全く学校に行ってない子供達も大勢います。学校の建設事業も続ける必要があります。
このような需要に応えるため、アフガニスタン政府は、国家連帯計画(村々にインフラ整備のための資金を供与する)、地方安定化計画(県知事に予算を与え疲弊した郡の統治と復興を行う)などを実施しようとしていますが、これを迅速に行うための能力は十分に育っておらず、国際社会の協力を得ながら一歩一歩進めるしかありません。
このような中、今回の二回の出張及び先月末のカンダハール出張で発見したことは、どの地方にも復興・復旧需要に応えて事業を行いうる企画力と技術力を持った現地のNGOが育ってきているということです。これら現地NGOは、地方の建設会社と契約し復興事業を行っています。NGOは、復興事業プロジェクトを企画し、技術的観点からの助言と資材・資金の供給を行いつつ建設会社を指揮して事業を実施するのです。もし、有力NGOが民間の開発企画会社に変貌すれば、将来地方政府が人的にも予算的にも行政能力を備えるようになったとき、良いパートナーになり得ます。また、これは、アフガンNGOの99%は民間会社と変わるところがない、と言って、その区別を推進しようとする政府の政策とも合致します。
私は、出張に同行し、草の根無償資金協力プロジェクト生産会社社長と私が呼ぶK書記官に言いました。「これまで、面的に草の根無償資金協力受益地域を広げてきたが、今後はこれに加えて、郡を絞って郡ごとの地域総合開発をやろう。いくつかのプロジェクトが相互に関連し合って郡の経済発展を導くようにするのだ。その計画は我々が選択した有力な地元NGOに対象郡の関係者と協議の上作ってもらう。その際は、そのNGOが民間会社に育つようにし向ける。県にも計画を話して県の要求もNGOに満たさせるようにする。勿論、緒方イニシアティブや地方安定化計画の対象県では、対象郡選定では協議調整を行う。できるかい。」K書記官は、答えて言いました。「そういうのをやってみたいんです。来年度は大型草の根無償資金協力スキームを使って、10件とは行かなくても最低5件はつくりたいです。」大型草の根無償資金協力スキームは、承認に少し時間がかかりますが、一件に1億円まで使えます。一定地域で関連するいくつかのプロジェクトを同時に実施するので、プロジェクト間の調整・連携を指導する者が必要です。「南部、東部などには、使えそうな地元NGOが見つかりました。彼らと話をしていきましょう。」「だったらそういうNGOのリストとネットワークをつくって全国展開させよう。」
アフガニスタン全土には三百を超える郡がありますから、5つの郡を総合開発してもたかがしれているかもしれません。しかし、地方開発の政府プログラムはありますし、緒方イニシアティブも地域総合開発を追求しています。基幹道路の復旧建設事業は大々的に進みつつあります。これらと連携しかつ迅速さに欠けるかもしれないこれらのプログラムのモデル、先駆けとなれれば、意義は大きいでしょう。
今回のジャララバード出張では、ペシャワール会の灌漑用水路建設現場も見てきました。次回は、その報告をします。今日はこれで。
平成16年3月19日
在アフガニスタン日本大使館・宮原信孝
- by Miyahara
- at 17:58
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