2006年10月10日
北朝鮮の地下核実験実施から考える(国際問題徒然No.30、2006年10月9日)
北朝鮮が核実験を行なった。今後の対応のキーワードは「核」だ。国際社会におけるその重要性と深刻さを理解しておく必要がある。他の問題とは違うのだ。北朝鮮と今後の対応、更に「核」をキーワードとしてイランのアザデガン油田問題を考えて見た。
1.北朝鮮核実験
北朝鮮が、宣言していた地下核実験を実施した。宣言後、情勢はなんら変わっていない、或いは北朝鮮の望む方向に動いていないのだから、宣言したものを取り消すはずもない。大方の予想通りで、議長声明を出した安保理メンバー国も、予想しつつ、演ずべき役回りをそれぞれ演じてきたというところだろう。
問題は、これから国際社会がどう対応するかであるが、キーワードは、「核」であろう。今回の核実験で北朝鮮は一線を踏み越えてしまった。NPTから脱退しようが、核保有を宣言しようが、或いはミサイル実験を行なおうが、北朝鮮の脅威度には議論の余地があったろう。しかし、核の管理は、主要国のトップ・プライオリティである。たとえ、中国やロシアが制裁を望まないとしても、北朝鮮の動きを止める有効な対案が出せない限り、最早、国連憲章第7章下の制裁へ向けての議論を止められないであろう。
このような中、日本が、独自に経済制裁を強化し、安保理議長国として、或いは極東の最大関心国として、各国に同調を求め、多国間協力を形成していくことは極めて意味のある行動である。否、そうしなければ、各国に日本の真剣みや本心を疑われてしまう。また、米国を限定的軍事攻撃などの単独行動に性急に走らせないためにも、必要だ。
対北朝鮮多国間協力を形成する意味からすれば、今回の安倍総理の中国及び韓国訪問は、良かった。ぎりぎり間に合ったというところだ。実験前に中国に行ったのもよかった。実験前に、日中首脳が、核実験を含む北朝鮮情勢で「深い憂慮」を表明し、一方が、「絶対に容認できない」と述べ、他方が「自制するよう働きかけたい」と応じたことは、大きな意味がある。中国は、自制させることに失敗したのだから、制裁へ向けての議論の中で、北朝鮮の姿勢を根本から変えるような案を持ち出さない限り、制裁反対は難しい。反対すれば、国際社会の信頼を失う。特に米国との関係がもたなくなるであろう。中国は5大国の一国として核の管理には大きな責任があると見られているし、自認しているはずだ。そこを突かれるのは中国にとって致命的だ。
韓国については、4年ほど前から明らかになっていた太陽政策の失敗或いは有効性のなさを、ノムヒョン大統領もやっと認めた。政策の変更を検討するようだ。安倍総理の韓国訪問は、それを確認し、一気に韓国を対北朝鮮の日米韓連携に呼び戻す意味がある。
ロシアや英仏が最終的に制裁に反対するとは思えない。そもそも5大国は、5大国以外に核を持たせたくないのだ。特に本来ならコントロールできると思っている国には。北朝鮮が作り出した現状からすれば、これらの国々にあえて反対する理由は見当たらない。米国の足を引っ張るためとすれば、あまりにも問題が深刻すぎる。
従って、北朝鮮問題は、制裁の方向に向かって進む。制裁の実施により情勢は益々厳しくなるであろう。その際、日本国民が耐えることが出来るか。また、多国間協力・連携を保つことが出来るか。国民が関心を持ってみていかねばならないところは、ここだ。
2.イラン
イランについては、核実験をしたわけでもないので、北朝鮮ほどの緊急性はない。しかし、国際社会全体でみれば、イランが核保有することは、北朝鮮がそうなった以上の影響がある。欧米諸国は、対北朝鮮以上の対応以上の真剣さで、イラン問題を扱っていると考えるべきである。
日本にとって北朝鮮の核問題が死活問題であるなら、日本もイランの核問題も同様の重要性をもつものとして、イランに対応すべきである。
数日前、アザデガン油田の日本側利権が10%になったとの報道があった。これに対し、自主原油の確保に失敗している、米国の言いなりになっているからだ、などという主張が見受けられる。この主張は、根本から間違っている。
自主原油は、誰に対する自主原油かを問い直すべきだ。そもそも自主原油は、欧米諸国やメジャーから独立確保した原油であったはずだ。産油国の天然資源への権利という枠組みの中で、技術や資本の投入により、資源の権利の一部を譲渡するものであり、事情と国情次第ではその権利も反故にされることもある。産油国との友好関係が基礎であり、技術や資本力で力をつけた友好的な産油国が産出した原油を市場価格で買うのと違いはあまりない。
今回の問題は、米国に言われて止めると言う筋合いのものではない。アザデガン油田の話は、穏健改革派のハタミが大統領で、その動きを支援することになることも念頭に外務省はゴーサインを出している。穏健改革派が保守急進派につぶされ、その代表たるアフマドネジャディ大統領が生まれた時点で、その賭けは失敗に終わったのだ。更に、秘密核施設の問題もアザデガン油田権益契約後出てきた。世界の核問題に真剣に取り組んでいるのならば、日本は、失敗に終わったとするだけでなく、イランに対し騙されたとして、契約打ち切りを言い出しても良いくらいである。
いずれにしろ、アザデガンに未練をもっているとイラン側に思われる姿勢は良くない。サダムフセイン下のイラクでもあったように、そのうちリベートや輸出禁止の汎用品の要求を受けることになることを忘れてはならない。(国際問題徒然No.30了)
九州筑紫21世紀国際問題研究会
世話人 宮原信孝
- by Miyahara
- at 01:47
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