2006年10月15日

経済制裁の後は?(国際問題徒然No.31・2006年10月14日)

 日本時間10月14日夜の段階で、北朝鮮の核実験に対応する国連安保理決議はまだ採択されていない。「中国の外交努力により制裁が国連憲章41条の経済制裁の範囲内になってしまった」、「中国が、決議が臨検を認めることに反対」、「ロシアが、経済制裁の品目を限定しようとしている」などということにマスコミは、注目しているようだが、これは、今後の流れからすれば、枝葉末節だ。
 見忘れてならないことは、北朝鮮に制裁が課されること、それにより北朝鮮の意思を変えられるか、変えられなければ次の手をどうするか、ということである。いずれにしろ、政治的には極東は暗い環境になる。No.31でも言ったが、その環境に、日本国民が耐えることができるか、また、多国間協力・連携を保つことが出来るか、が肝心である。

 ロシアの動きは、中国と米国の取引に便乗しているものと考えた方が良い。北朝鮮を許さない、としても、中国にしてもロシアにしても、北朝鮮の暴発や近隣海域での緊張は、政治的・経済的に大きな負担をもたらすものだ。それは、特に中国において著しい。だから、中国は唐カセンを特使として米国にまで送った。多分これで、制裁の流れの大枠は作られたはずだ。今回は経済制裁に止めるという大枠が。経済制裁が軍事的な緊張から衝突へと変化していく懸念を払拭しておく観点からすれば、安保理での中国の言動は合理的である。中国の言動を見てロシアが便乗するのも昨今のロシアの行動様式からして合理的である。
 今回、米国は、対北朝鮮制裁を経済制裁にとどめることで、中国に譲歩した。米国が譲歩した以上、中国から受け取ったものがあるはずである。経済制裁が実効を見せるまでは時間がかかる。その間、北朝鮮の動きは野放しになるのか?野放しにしないための協力の言質を米国が中国から受け取っていないと考えることは、非合理的である。経済制裁の後、中国が、北朝鮮を野放しにしない米国或いは国際社会への協力をどのように行なうのかを注視していかなければならない。
 私見を述べれば、中国にとって都合の良い北朝鮮は、米国の影響下になく、中国の経済発展や政治的地位に正の益を与えるか、少なくとも負の影響を与えない国である。今の北朝鮮は中国にとって都合の悪い国になっている。普通に考えると、金正日体制が暴発してつぶれる前に金正日体制を変えるのが、或いは代えるのが、中国にとって最も良いシナリオということになる。そのシナリオに近づけるため、米国或いは国際社会への協力は何なのか?中国による金正日説得はこれまで全て失敗に帰した。経済制裁の中、北朝鮮の姿勢を変える中国の行動が米国及び国際社会から求められる。変える手段は何か、注目していくべきである。
 北朝鮮に対する経済制裁及びその実効を求める様々な動きの錯綜という極東の国際環境の中、日本はどう動くのか?日本国民は、そのような国際環境と日本に求められる行動に耐えられるのか?
 臨検が安保理決議の中に含められるかどうか分からないが、既に臨検の後方支援を検討するかしないかで、与野党、与党内で意見が割れている。政府は安保理決議に先駆けて、日本独自の経済制裁を決定、実施に移した。しかし、それを支持した国民も、自分の身が切られるかもしれない事態に行き着くかもしれないというところまで考えが行き着くと不安を覚え始めているように見える。
 北朝鮮による国内テロも心配されている。政府は、それへの対応を行なうべく行動をとっているように見える。しかし、不特定多数のチェックを受けない地下鉄、鉄道、バスへのテロ攻撃が、欧州やインドで起こったように、起こらないとも限らない。それへの対応が出来ているとは思えない。核ミサイルが日本に落ちてくる可能性がゼロとは言わないが、そのようなテロ事件が起こったり、北朝鮮への経済制裁で不利益をこうむる日本人、在日朝鮮人からの不満が出てきたりしたとき、日本の世論は、どっちに振り子を降るのか?
 経済制裁が、北朝鮮の姿勢を変えるという意味で実効をなかなか見せない場合、北朝鮮に圧力をかけるという多国間協力が緩むことも考えられる。経済制裁後の各国の思惑も微妙に違いが出てくるであろう。その際、日本が国論をどこまでまとめ、その多国間協力を支えられるかが、21世紀の世界及びアジアにおける日本の立場を決めると思えてならない。(国際問題徒然No.31了)

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