2008年03月08日
杜若3月号(No. 5 March, 2008)
九州筑紫21世紀研究会
杜若 Kakitsubata
No. 5 March, 2008
TOPICS
ホットけない世界の問題:「ドバイ、アブダビ−世界のハブ、中東のハブ」
九州から世界を:「九州が日本の経済の柱を支える」
コラム:「ある若者の跳躍」
世界の国から
お知らせ
編集後記
ホットけない世界の問題:「ドバイ、アブダビ−世界のハブ、中東のハブ」
今、ドバイが活況を呈している。世界の4分の1の建機がドバイに集合するぐらいの建
設ラッシュだという。1万平方キロにも満たない小さな国がどうしてそんなに盛況なの
か?
そもそもドバイといっても、どこにあるのかご存じない方が多いであろう。中東南部
ペルシャ湾岸、つまりアラビア半島の北東部に位置するアラブ首長国連邦(UAE)を構成
する7つの首長国の一つである。現首長ムハンマドUAE副大統領兼首相は、70年代20代の
青年UAE国防相としてドバイ空港の管制塔で日航機をハイジャックした日本赤軍と交渉し
たこともある。そのムハンマド首長の指導でドバイは、貿易・金融・情報のハブとし
て、また観光業も行う街として発展してきた。
しかし、よく考えてみるとドバイの発展は、理の当然のことのように思える。ドバイ
を含むペルシャ湾沿岸の港町は、紀元前から中継貿易で発展してきた。古代メソポタミ
ア文明は、インダス文明と交易を行っていたことが明らかになっている。交易は船で行
なわれ、ペルシャ湾沿岸の真水の出る場所が港町として栄えた。バーレーンのデルモン
文化はその良い例である。
繁栄する港は、時代ごとに変わったが、ペルシャ、インド、中国などの大文明圏を結
ぶ貿易は続いた。18世紀末、今のUAEの北端に港町をもったカワーシム一族は、ペルシャ
帝国、トルコ領イラク、インド、東アジア、東アフリカ海岸を結ぶ交易で栄えた。カワ
ーシム一族の末裔のスルタン・シャルジャ首長国首長の「アラブ海賊という神話」によ
れば、記録された貿易品の内容から明白に中継貿易を行っていたと言えるそうだ。
現代、ドバイが中継するものは何か。中東産油国の石油・ガスと同産油国が近代生活
を営む上での世界からの必需品、というのはよく分かる。しかし、これではペルシャ湾
岸と欧米・日本など限定された世界しか見ていないことになる。ドバイを中心に巨視的に
地図を見ると分かることは、東にはインド、東南アジア、中国、日本、韓国、更には豪
州、NZが、西には中東、欧州が、北には中央アジア・ロシアが、南にはアフリカ諸国が
存在し、これを同首長国のエミレーツ航空が空路で密につないでいるということであ
る。更に、地図では見えないが、情報と金融のネットワークが広がる。ドバイを中心と
して、モノ、ヒト、カネ、情報が世界規模の量で動いている。まさに現代に相応しいハ
ブとなっているのだ。
カタールはこれを真似て、カタール航空のネットワーク化と自国のハブ化を急いでい
る。ここに、ドバイとともにUAEを構成し、UAEの首都も位置するアブダビも参入してき
た。アブダビ首長国は巨大な産油国でその巨額のオイルマネーを自国の近代化だけでな
く、ドバイや世界への投資に使ってきた。それが、収入源の多様化にその資金力を使お
うとしている。いわゆる工業特別区づくりである。アブダビが工業化する上で、資本、
労働力(アジア・アフリカからいくらでも連れてこられる)、市場(アラブ自由貿易圏
4.5億人+イラン)はもっている。問題は、他のどの中東諸国にも負けない技術力であ
る。そこに、日本を始め先進国がパートナーとして参入する余地が開ける。アブダビ側
はそれを十分承知の上でセールスをかけている。2月25日には、アブダビ産業シンポジウ
ムが東京で行われたが、在京大使のみならず、アブダビ政府で首長家に次ぐ名家出身者
が顔を出していた。アブダビは本気である。声をかけられている今は日本企業にとって
絶好の機会ではないか。
九州から世界を:「九州が日本の経済の柱を支える」
日本は、今、よく言われるように少子高齢化の時代を迎えている。昨年からは団塊の
世代の一斉退職が始まった。これから数年間多くの退職者が生み出される一方、労働市
場へ参入する人口は減少の一途を辿る。日本の繁栄を支えているのは毎年一定割合の経
済成長であるが、その経済成長を支える生産性の向上には、この状況は致命的である。
将来の選択肢は、人工知能をもったロボットの大量導入か(と言っても人工知能は未だ
十分に開発されてはいない)、海外からの知的労働力の導入ぐらいしか考えられない。
海外からの知的労働者は、日本の現行法の下で受入れ可能である。壁となるのは、日本
語である。医療分野では、それがあからさまに現れる。患者の命を預かる医師・看護士の
コミュニケーションに不完全は許されない。だから、海外からの看護士受入れにも日本
語能力1級試験合格が条件とされた。
他の分野でも日本の企業・団体は、日本語で仕事をする。英語を公用語とする会社も
少しずつ増えてはいるが、全ての企業・団体が完全にそうなるには日本の英語人口は十
分ではない。
外国人側もわざわざ日本語を覚えて日本に働きに来る、というには事情がある。せっ
かくフィリピンとの間で看護士や介護士の受入れが合意されたのにもかかわらず、フィ
リピン側で熱意がないのは、わざわざ日本語を覚えなくても看護師として働くことので
きる労働市場は世界中に十分にあるからである。フィリピンの公用語は英語だ。国内で
十分に職がなく、日本語を覚えるという苦労をしてでも日本に行くのが他の世界の労働
市場に行くより魅力的な場合にはじめて日本行きへの熱意が生まれる。
全てのアジアの労働市場事情を見たわけではないが、中国は、日本に知的労働者を送
り込む潜在性が大きいに思われる。中国では、大学卒業生の就職口が限られている。海
外に行って働きたいと思う者は多く、そのために外国語を勉強する。欧米圏に行く中国
人若者も多い。しかし、中国は13億人超の国であり、欧米圏に行くことのできる人口は
それからすればごく少数である。また、経済が発展してもその巨大人口にとって十分な
雇用を生み出してもいない。
中国には多くの日系企業が進出している。中国人のためのあこがれの職場である。ま
た、日本国内でも中堅技術者が足りない。もし日本語を覚えれば、日系企業に、或いは
日本国内の企業に就職できるかもしれない状況が生まれている。
今福岡県に本社を置く人材派遣企業が日本語学校を杭州に作ろうとしている。この学
校は、日系企業に就職を求める学生に日本語を教えるだけでなく、企業への紹介も行な
う。さらに日本への留学を希望するものには、留学先の紹介も行なう構想である。これ
が軌道に乗れば、福岡が日本国内経済のゲートウェーとなる実例を示すことになる。ま
た、日本経済の根幹を支える役割を担うことにもなるはずだ。
コラム:「ある若者の跳躍」
ひょんなことから、私が今住む久留米市においてクウェートに留学したことのある20
代の女性に面識を得た。この女性Iさんは、久留米市の生まれ、育ちで、久留米市の県立
高校を卒業し、福岡市の大学を卒業した。卒業後、世界でも名の知れた一部上場企業に
就職が決まっていたのに、それを蹴ってクウェートの大学に語学留学した。
Iさんは、高校時代留学でもしたのであろう。英語ができる。大学時代は、留学生の世
話をしていた。世話した相手の中に、クウェートからの留学生がいた。Iさんは、就職予
定の一部上場企業には、早めに海外に派遣してくれることを望んでいた。しかし、同企
業の説明では、5年間は海外に行かせないとのことだった。Iさんは、すぐにも海外に行
きたい。そんな悩みを留学生達に話すと、クウェートからの留学生が、クウェートの大
学に語学留学(アラビア語)できると教えてくれた。
Iさんは、そこで跳躍した。5年後の海外勤務ではなく、今の留学を選んだのだ。2年間
の留学の話は、面白かった。厳しい寮生活、海外旅行禁止、改善に向けての学生の組織
化、大学や政府への働きかけ、それに対する日本大使館若手外交官のサポート等々。学
生達に聞かせたい。
自分で意思を持ち、機会がきたらその機会を逃さず、行動する。困難にぶちあたった
ら、解決のために努力する。そんな若者が、久留米市に住んでいたと知って明るい気分
になった。
世界の国から
○ 伊崎のオーストラリア人友人「お金を引き出す為にデパート、銀行、あらゆる
可能性のある所を回っても全て閉まっていてお金を引き出す為にまる1日潰れた。結局
空港まで行ってやっと引き出せたけど、日本は世界的にもかなり進んだ技術やサービス
を持っていて、しかも安全な国なのにお正月期間中にはどうしてお金が引き出せないの
か意味わかんない。」(本年正月の日本旅行中1/4)
○ 伊崎のアメリカ人友人「日本では魚をよく食べると聞いていたのに日本で外食
しようと思うとほとんどの料理に肉が入っていて、ベジタリアン専門店などもないから
ベジタリアンにとっては外食が難しい。」
○ バーネット・ルービン・ニューヨーク大学国際開発センター所長「(東京で開
催されたアフガニスタン関係の国際会議に出席した後)今回の会議は成功した。なぜな
ら退屈だったから。真の問題は、専門家や現場で扱っている人には、発言者の発言から
読み取れるが、そうでない人には隠されている。」(2/7)
○ 知名定一ドバイ日本料理店「喜作」料理長「今のオーナーは、店の経営・何の
料理をどのように出すかなど、全て自分達に任せてくれるからいい。大抵の中東の日本
料理店は、中間マネジャーがそれをとりしきっていて、最高のものが出せない。」
(2/18)
○ アフガニスタン出張中の警備関係者「(南部地域の治安情勢について)以前か
らテロ攻撃の目標はその大半が警察であったが、その攻撃要領は「多人数による検問所
等への襲撃」から「少人数による単独で行動する(勤務時間外を含む)警官への襲撃
(暗殺)」へと変化してきている。この戦法の変化は敵の 「戦力不足」 からくるも
のなのか、または 「この戦法がより効果的」との考えからくるものなのかは不明であ
るが、全般状況から前者の公算が大である。」(2/25)
お知らせ
○ 3/3〜17:杜若発行人・宮原信孝は、中東地域(UAE=ドバイ・アブダビ、ヨル
ダン、パレスチナ自治区、イスラエル)に出張します。杜若4月号でも報告しますが、個
別にお聞きになりたいことがあれば、発行人にメールでご照会下さい。
○ 3/7(水)17:00 - 18:30:福岡アメリカンセンターにて、現代アメリカ基礎講
座第39回『移民問題と2008年米国大統領選』が開催されます。参加ご希望の方は『お名
前・所属(学校名)・電話番号・Emailアドレス』をfacrs@state.govまたは電話092-
733-0246に3月5日までにご連絡ください。(同時通訳つき)
○ 3/27(木)16:40-18:10:杜若発行人宮原信孝によるNC筑栄会講演「ドバイ商
人-シンドバッドの世界から現代へ」(筑栄会員限定)
編集後記
少子高齢化を迎え、これからの日本にとって外国人労働者の存在は不可欠であるよう
に思う。日本は島国という事もあり昔から外国人との交わりが苦手な人種のような気が
する。これまで外国人は常にゲストであり共存という感覚は日本人にはまだ生まれてな
いようだ。ただ、少子高齢化に伴った人材不足という現実問題はもう直前まで迫ってい
る。外国人にとってもっと住みやすい町づくり、働きやすい環境づくりがこれから大切
ではないだろうか。 伊崎真理
発行者:宮原信孝
九州筑紫21世紀研究会代表世話人
「フィリピンで英語を学ぼう!」企画実行委員会代表
連絡先:久留米大学文学部宮原信孝研究室
839-0851久留米市御井町1635
TEL:0942-43-4411 FAX:0942-43-4797
Email:abuakiranyes@aol.com
ブログ:miyaharanobutaka.com
- by Miyahara
- at 18:22
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