2008年05月18日
杜若5月号(九州筑紫21世紀研究会)
杜若5月号(Kakitsubata No. 7 May, 2008)
TOPICS
ホットけない世界の問題:「中国―世界的文脈で」
九州から世界を:「福岡空港アジア・ゲートウェー化に必要なこと」
コラム:「日本人はもっと英語を使えるようになるべきだ」
世界の国から(アメリカ、フィリピン、アフガニスタン)
お知らせ
編集後記
ホットけない世界の問題:「中国―世界的文脈で」
胡錦濤中国国家主席の訪日が終了した。この訪日については、毒入りギョーザ事件、東シナ海ガス田共同開発問題、チベット問題がポイントであるとする解説がなされたり、中国側は、日中関係を暖める「暖春の旅」としたり、様々なことが言われている。しかし、私は、この訪日の意味は、世界的文脈の中で捉えるべきだと考える。
冷戦後、世界のほとんどの国で市場経済体制が採られることになった。この結果、労働力の多さと産業力によって、東アジア諸国、特に中国やインドが急速に発展し、保持するエネルギー資源を基礎として中東諸国やロシアが経済力をつけた。米国1人勝ちの時代は終わって、EU諸国に加え、中国、インド、ロシアが、拮抗する時代が見えてきた。
中国は、現在「平和的台頭」という言葉で、近隣諸国・世界の主要国との摩擦を減らしながら、経済発展にまい進しているが、同時に軍事力の伸長も著しい。軍事力は政治力を強化する。
そのような中で、政治経済の世界ルールの基礎を作り、それを発展利用してきた欧米諸国は、中国をその世界のルールの中に取り込んでしまうという方向で動いている。経済では、WTOを中心とする自由貿易・投資のルールの枠内での中国経済の発展。政治では、民族自決・基本的人権の尊重のルールに従わせること。知的財産権、環境問題、中国製品ボイコット問題、チベット問題等は、その過程で現われてきた問題だ。
中国の「平和的台頭」の考えに従った国づくりの計画は2020年まで決まっている。もし予定通りなら2020年には、日本を抜いて米国に迫る世界第2位のGDP大国となっているはずである。そうなれば、中国が、政治的にももう少し積極的(aggressive)になっても不思議ではないであろう。
そこに行きつくまでに中国が成功させなければならないのが、北京オリンピックと上海万博である。高度成長期、日本は東京オリンピックと大阪万博を弾みと象徴として発展した。
また、中国は、共産党支配体制の中でこの「平和的台頭」を行わなければならない。そのためには分裂の目は全てつむ必要がある。だからこそ、地方間経済格差や都市・農村間格差の是正、そして民族融和を謳う。必要なら力も使う。平和的台頭路線を基盤にしながらも支配の揺るぎは許さないという態度である。チベット問題への対処はその例で、一方で分裂に至らないように力で抑え、他方で北京オリンピックのイメージを救うために対話の姿勢を見せる。
中国は、平和的台頭路線が変わっていないことを世界に示す必要がある。また、中国が揺らいでいないことも示す必要がある。特にオリンピック前に。その絶好の機会が胡主席の訪日だった。チベット問題、環境問題その他への対応についてG8議長国日本を通じて欧米に知らせることができる。また、予定通りの訪日で中国の政策と体制に揺るぎがないことを示すことができる。
これに対して、日本はどうか。日本は、長期的には、欧米諸国と同様、中国を世界ルールの中に組み込む政策を実施し、中期的には、環境等の新たな分野での世界ルール作りにイニシアティブをとり、短期的には、ガス田共同開発・毒入り餃子事件の二国間問題を解決するとともに、G8議長としての役割を果たす必要がある。そのために胡主席訪日を十分に活用しなければならなかった。
中国側は、所期の目的を達成したようだ。一方、日本側はどうか。中国を世界ルールに取り込む方向で一つでも具体的な成果を挙げたか。CO2削減について中国側の政治的言質をとりつけたことは最低限の成果であろう。チベット人権問題、ガス田共同開発問題、毒入り餃子事件については、具体的ではないが、中国最高首脳の言質を得た。これをどう使って常に日本側と相談する体制を築いていけるかが、成果の是非を決めることになるであろう。
九州から世界を:「福岡空港アジア・ゲートウェー化に必要なこと」
久留米大学文学部国際文化専攻2年生は、来年夏に異文化体験実習をフィリピンで行うことになっている。その実習アレンジのためにゴールデンウィーク前半2泊3日でフィリピンに出張した。
無事に仕事も終えて帰国の途につこうとしたが、福岡行きの便はキャンセルになった。次の日、1時間遅れで同じ便に乗って帰国することができたが、福岡と福岡空港について考えさせられることがあった。
第一は、中部空港との比較である。当初の帰国日にマニラ空港に到着してから実際に帰国便が飛び立つまで約30時間あったが、その間2便の名古屋中部空港行きが飛び立った。3月、ドバイから中部空港経由で福岡に帰国した際の知識からすると、中部空港では18時および19時台に北は札幌から南は鹿児島まで地方空港へ飛ぶ国内便がそろっている。計算するとマニラから中部空港へ向う便は、これらの航空便に接続可能である。
これに対して福岡はどうか。乗り入れ外国航空便が日本全国とは言わないまでも西日本の地方空港へ向う国内便と複数接続するようになっているであろうか。少なくともマニラからのフィリピン航空便はそうなっていない。
第二に、ゴールデンウィーク中というのに、福岡への便があっさりキャンセルされ、その乗客は次の日の予約客がいる既存の便に全員乗っても、まだ空席があるほどだったということである。名古屋中部空港行きは正確にはわからないが、実見して明らかに福岡便の比ではない乗客の多さであった。こうなると、機体故障と代替機の安全確認問題のためキャンセルとのアナウンスであったが、それは怪しく、実際には、2回飛ばすよりも1回飛ばした方が経済的ということが理由ではないか。
福岡空港は、ハブ空港とは言えない。これでは「アジアのゲートウェー、福岡」の看板が泣く。最近の新聞報道では、福岡は新空港を海上に建設するそうだが、その前にやることがあるのではないか。
それは、外国航空会社の便に接続した、日本(或いは西日本)各空港・各地へ向う航空便・鉄道便・バス便を設定することである。このために、福岡政財官界は、ビジョンを共有し、アジア各国の航空便を誘致と航空・鉄道その他陸上輸送会社の接続便設定の働きかけを行う必要がある。官頼み、航空会社・鉄道会社頼みだけでは、真のゲートウェーには福岡はなれない。
コラム:「日本人はもっと英語を使えるようになるべきだ」
上記帰国便でのトラブルでは、結局、フィリピン航空が用意したマニラ市内のホテルに1泊した。
ホテルに着いて、部屋の割り振りの時のことである。私はこのためならんだ乗客の列後尾にいたが、列前方の男性日本人客と係官のやり取りを聞いていると、係官は、1人旅の乗客をグループにして2人一組で部屋に入れようとしている。私は、見知らぬ人と同じ部屋に一晩泊まるのはご免だ、と思い、1人部屋に入れるよう強く申し入れた。すると、係官はあっさりと1人部屋の鍵をくれた。
鍵と夕食券は渡されたが、次の日の空港へ向うための情報をくれずに行かせようとするので、私は係官に尋ねて、電話とロビー掲示板で知らせるという返事を得た。泊まったホテルは、客室が二つの別の棟にあり、それぞれの棟に別々のエレベーターを使って行くようになっていた。その説明は係官からはなかったので、乗客はみな戸惑っていた。私はホテルのボーイに聞いて自分の部屋に行くためのエレベーターの場所を聞いて他の日本人客に教えた。
次の日、ホテルロビーで空港行きのバスを待っているとある日本人乗客が私に、帰国が遅れることを会社にホテルの電話で知らせたがその電話料は自分で払わねばならなかった、と不満を述べてきた。不満は、私に言わずフィリピン航空に言ってくれ。どうやら当該乗客は出発間際のゲートカウンターで同航空日本人スタッフに話したようだが、そのスタッフは、フィリピン人同僚に伝えた様子もない。
空港では、新しい搭乗券をもらって、そのままゲート内に入ろうとすると、もう一度出国管理に行けと止められたので、新しい搭乗券に添付された古い搭乗券を見せつつ説明してわずらわしい出国管理の手続きは免除された。他の乗客は、と見ると出国カードを再度書き出国管理のカウンターに並んでいる。
日本人は、もっと英語が使えるようになるべきだ。さもなければ、不条理な状況下で不利な扱いを受けるだけだ。1人部屋か見知らぬもの同士の2人部屋か、家族や会社への連絡は誰の責任か、帰国便に乗るためのバスの出発時間と集合場所やその他情報、空港での必要な手続きなどなど。自分ではどうしようもない搭乗予定便の欠航という不幸な状況下、乗客が主張すべきことは多々ある。あの状況を把握できていた日本人乗客は、自分だけだと思うとお寒い限りだ。
世界の国から
◎ ジョン・メイシンガー氏(米国加州モデスト市姉妹都市委員会元委員長。久留米日米協会主催モデスト市長一行歓迎会に出席して):
(久留米のフォークグループの音楽ライブを見ながら)「アジアの人達にはいつも驚かされる。欧米のコピーから初めていつもそれ以上のものにしてしまう。今や世界1のフレンチシェフだってアジア人だよ。」
「私の母親はモデスト市で初めての女性市長だったんだ。日本は女性の地位がまだまだ低い。残念だね。」
(ウエイターが色の違うケーキを何個かテーブルに置いたのを指さして)「素晴らしいと思わない?これがアメリカだったらきっと1色のケーキを持ってきただろうね。日本はこのような配慮がすばらしい。」(4/15)
◎ 多久島氏(在フィリピン日本人会社経営者):
「フィリピンは、主食の米をかなり輸入に頼っているが、世界的な値上がりで、これまで低所得者が食べていたベトナム産の米を高所得者が買うようになっている。低所得者が買える米がなくなっている。」(4/28)
◎ 越智楢男氏(在アフガニスタン企業警備関係者):
「カブール市内のテロ事件は、昨年の12月以前(月平均5〜6件)に比し、今年の1月以降急激に減少(月平均1件)していた。また戦勝記念日式典会場周辺においても、これまで不審者の侵入情報等もなく、比較的安定した地域であると思われていた。しかしながら本件(式典襲撃事件)を通じ治安当局者に対する信頼の低下に加え、カブール市ないにも多数の不審者が潜入しているという事実が確認された。」(5/3)
お知らせ
◎ 久留米大学公開講座:「人間の安全保障」と今日の世界(*)
15:00-16:30 久留米大学 福岡サテライト(アクロス福岡東棟4階)
5月16日(金):アフガニスタンにおける「緒方イニシアティブ」(宮原信孝)
5月23日(金):アフガニスタン政府構築―同国財務省に派遣されて
(福田幸正:国際通貨研究所 上席研究員)
6月13日(金):激動する世界の中で「人間の安全」をどう守るか?(宮原信孝)
◎ 久留米大学公開講座:世界情勢と日本(*)
6月15日(日):アフガニスタンと世界(宮原信孝) 14:00-16:00 エールピア久留米
◎ 久留米大学経済学部公開講座:「新・市民参加のまちづくり」(*)
6月6日(金):小さなNGOにできる大きな仕事 in Vietnam
14:55-16:25 久留米大学御井キャンパス 100号館128教室
板東あけみ ベトナムの子どもたちを支援する会 事務局長
◎ 六ツ門大学講座:「現代世界と久留米」 奇数月第3金曜日18:30-20:00
第一回 5月16日:「人間の安全保障」と久留米 (宮原信孝)
*出席ご希望の方は、宮原(miyahara_nobutaka@kurume-u.ac.jp)まで。
編集後記
海外に行くと必ず日本人のツアー団体を目にする。その光景は私の目にはあまり良いも
のには映らない。ツアー旅行を批判するつもりは全くない。時間の無い日本人にとっては
最も適した旅行スタイルなのかもしれない。ただ、もっと多くの日本人が海外でも自分達
で行動し、英語で意見を述べる事ができれば不条理な状況、トラブルを回避できるだけで
はなく、その国の魅力を存分に味わうことができるだろう。同時に、その事が海外から受
ける日本人の評価にもなるはずである。もっと英語力を身につけよう!(伊崎真理)
発行者:宮原信孝
九州筑紫21世紀研究会代表世話人
「フィリピンで英語を学ぼう!」企画実行委員会代表
連絡先:久留米大学文学部宮原信孝研究室
839-0851久留米市御井町1635
TEL:0942-43-4411 FAX:0942-43-4797
Email:abuakiranyes@aol.com
ブログ:miyaharanobutaka.com
- by Miyahara
- at 12:57
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