2008年06月07日

杜若(kakitubata)6月号・No.8

九州筑紫21世紀研究会が送る杜若(Kakitsubata)6月号(No. 8 )のTOPICS

ホットけない世界の問題:「ミャンマー、中国、アフリカと人間の安全保障」
九州から世界を:「ちっご未来塾」    
コラム:「課題別の世界地図」
世界の国から
お知らせ
編集後記

ホットけない世界の問題:「ミャンマー、中国、アフリカと人間の安全保障」

 国外の5月は、『災害の月』という印象だった。これは、私だけでなく多くの方がもたれる印象ではないか。ミャンマーのサイクロン災害と中国の四川大地震。この2つの天災被害とそれへの対応は、「人間の安全保障」の考え方の浸透の必要性を改めて思い出させた。
 ミャンマーでは、13万人以上の死者が出たのではないかと言われ、国際社会は、緊急援助に急いだが、ミャンマーの軍事政権は、物資と資金だけを受け取り、人的な援助の申し出を完全に閉ざした。そこには、被害にあった人々の視点というものはない。援助物資や援助資金は一種の権力だ。これを握るものが、人々の支持を得、力を得る。軍事政権が、外国の支援を極端に嫌うのは当然であろう。ミャンマーが北朝鮮と同じ構図の国だということを、今回の件で改めて実感した。そこには、自らを守る政府と力はあっても、国民を守るそれらは存在しない。
 四川大地震は、当初の予想を上回る8万人以上の死者を出した。中国政府は、当初こそは受け入れ態勢が整わないことを理由に人的支援を断ったが、数日後には日本の緊急援助隊を筆頭に外国の人的支援を受け入れた。被災者の映像も国内外を通じて流れている。ものを言うようになった人民を治めるた、ということであろうが、政府は、外国の力を借りてでも国民の生命と生活を守る手段を講じている。
 それでは、中国が「人間の安全保障」の趣旨に適った状況にあるか、と言えば、そうではない。中国の経済は、90年代から急成長し、03年以降は毎年10%超の経済成長率を記録しているが、農村部は成長から取り残され、都市間でも奥地に行けば行くほど、成長の差がある。たとえその経済成長の恩恵を受けていたとしても、この災害で個人の経済が破壊され、今後の生活に支障があるかもしれない。
 「人間の安全保障」で言うところの、災害や急激な経済変化における「人間の安全」=「暮らしの安全」に対する備えがないのだ。これは、せっかくの経済発展を逆コースに戻す可能性さえ、秘めている。
 中国は、大災害で経済発展のスローダウンと国民生活の悪化の可能性を露呈したが、もっと厳しい状況におかれているのはアフリカである。アフリカでは、レアメタルや石油・ガス資源に恵まれ、その開発を基礎にここ数年年率5%の経済成長を続けている。中国や中東からの投資が増大しているのもこれを助けている。しかし、経済発展して国民生活が豊かになるには基盤は脆弱である。HIV/AIDSを代表とする感染症が、経済・行政・国民サービスを動かす人材の不足という形で、発展の基盤を揺るがしている。国民和解の不十分さ、農業への投資不足による食糧難、など挙げればきりがない。
 昨年6月に参加した、アジアの将来に関する国際会議(米国アジアソサイエティ主催ウィリアムズバーグ会議)では、21世紀前半における中国、インドの経済大国としての台頭が議論となった。中国、インドの成長は所与の要件として扱われていた。残りのBRICsであるロシア、ブラジルの経済成長や石油価格上昇に伴う中東諸国の投資資金増大も現在の世界情勢に大きな影響を与えている。アフリカもその波に、と思われているが、どうであろうか。今の資源を中心にした経済発展は、中産階層の増大に結びつくだろうか。中産階層を増大させるためには、確固とした産業が必要で、そのためには民間投資は必要だが、それを生かす体制と人材がアフリカ諸国に育っているのか。一部の者だけが富を得、大多数は苦しいままということでは、石油収入増大により進めた経済開発が破綻したイスラム革命以前のイランと同じことになる。
 TICAD(アフリカ開発東京会議)によって国際社会の注目をアフリカに向けるのは良いことだ。日本が対アフリカ支援を増額するのも良い。しかし、もし、アフリカで現実に起こっていることに沿った開発や支援にならなければ、また、もし、アフリカの個々の国に住む個々の人々の暮らしをどうやって安定させ豊かにしていくかという視点に基礎を置かなければ、長期的な意味でのアフリカの安定と発展はないのではないか。

九州から世界を:「ちっご未来塾」    

 『ちっご未来塾』の牛島事務局長にお会いした。お話を聞いて、自分自身の力で地域の未来をつくっていこう、という考え方と姿勢に心を打たれた。
 『ちっご未来塾』とは、「福岡県南地域に特化し、教育、環境、観光を盛上げ、その発展に貢献することを目的とした団体」だそうだ。それだけなら、地域活性化のため生まれた一団体ということになる。
 この塾では、地域の未来を地域の若者自らの力で切り開いていこう、としている。このため、単年度事業主義はとらない。会員の若者は、自らの仕事を持ち、その仕事において能力を発揮する者である。更に、お上頼み、中央頼み、人頼みではなく、自らの力で事業を行う。
 塾は、まだ発足して1年少々だが、すでに柳川において観光、環境などの活性化事業に取り組んでいる。昨年杜若第2号で紹介・賞賛した柳川白秋祭のプロモーションにも取り組んだという。船に乗った観光客が、柳川市民のおもてなしを受け、祭りの中に自然に参加していく、というコンセプトを、私は観光客の一人として感じ取ったが、彼らはそれを意識して演出していた。
 今年の白秋祭を更に全国に広めるにはどうしたら良いか、と問われた。私は、この祭りは世界のどこに出しても一級品なのだから、広く外国人に知ってもらったらよく、在福岡の領事館や外国貿易センターの職員を招待したら如何か、と応答した。
牛島事務局長は、それは良いアイデアでさっそく実行しよう、と言ってくれたが、その気風の良さが心地よかった。たとえ、外国人招待はなかったとしても、きっとそれに代わるアイデアと手法で今年の白秋祭を盛り上げてくれるのではないか。今後の活動に期待している。

コラム:「課題別の世界地図」
 
 最近、講演などで世界の話をするとき、どこを中心とした地図で世界を見るのか、ということにまず言及する。ドバイがなぜ発展するのか、ということを話した時以来だ。
 日本の世界地図は、太平洋をはさんで東西に新大陸と旧大陸が並ぶ。一方、欧米の世界地図は、大西洋をはさんで東西に旧大陸と新大陸が並ぶ。これだけみていると、日本も欧米も自国中心の世界しか見えない。自国に近いほど大きく、くっきり見えて、遠いほど小さくぼやけて見える。いや見えるのではなく、記憶するのだ。
 しかし、今はやりのグーグル・マップを利用してインド洋を中心に世界を見ると、ドバイの東にはインド、東南アジア、中国、日本、韓国、豪州が、西には中東諸国と欧州が、北にはロシアや中央アジアが、南にはアフリカが存在するではないか。ドバイは、旧大陸の生産・消費地や資源大国を結び付ける中心に位置していたのだ。
 世界の現下の問題として、環境、エネルギー、食料などがあげられる。それぞれの分野で影響を与える国を取り出して地図上に落として見ると世界の見方も変わってくる。
CO2排出量第1位、2位は米国と中国だ。両国の間に挟まれて日本がある。CO2排出に関しては太平洋が中心だ。
 人口や産業の規模に比して産出量が多く、石油やガスの大量輸出可能な国々は、中東、中央アジア、ロシアである。ユーラシア大陸の真ん中に固まっており、その東西に大量の需要のある諸国が存在している。中心はユーラシア大陸の真ん中南北にわたる地域と言えるだろうか。
 食糧の大量輸出国は、おおざっぱにみると、新大陸や豪州ということになる。もちろん、米輸出では、タイ、ベトナムなどの東南アジア諸国が1,2位を争うが、これらの国は自国消費確保等の理由で輸出制限をかけた。食糧問題は、人口に比した農業生産力の問題であると同時にその食料を買える国はどこで、買えない国はどこかだ。すると、地図は、輸出国、食糧を買える国、買えない国が中心の3種類ができる。
 さて、皆さんの各問題についての世界地図とどう違ったでしょうか?

世界の国から

アフガニスタン南部在住者:「我々は、2つのグループを持つ。第1のグループは、国境付近の反政府軍拠点や麻薬業者の麻薬製造工場近辺に住み、現地の情報を送ってくれる。第2のグループは、部族リーダーや国境近辺の有力者からなる。この地域(アフガニスタン南西部)のコミュニティは全て密かに我々を支持している。」(5/20)

お知らせ
 
◎ 6月13日(金)15:00-16:30(於福岡サテライト「アクロス福岡東棟5F」)
久留米大学公開講座:「人間の安全保障」と今日の世界
『激動する世界の中で「人間の安全」をどう守るか?』(宮原信孝)
◎ 6月14日(土)13:00-17:00(於あいれふ(福岡中央区舞鶴2-5-1)10F講
堂)
『国際交流とNGOの役割』シンポジウム:基調講演(宮原信孝)
◎ 6月15日(日)14:00-16:00(於エールピア久留米)
久留米大学公開講座:『アフガニスタンと世界』(宮原信孝)
◎ 7月18日(金)18:30-20:00(於「六ツ門大学」)
「現代世界と久留米」第2回『保健医療と久留米』(宮原信孝)

*いずれも、参加ご希望の方は、宮原(miyahara_nobutaka@kurume-u.ac.jp)まで

編集後記

著者が言うように「人間の安全」=「暮らしの安全」に対する備えは重要である。しかし仮に、東京で大地震が起きたとする。さて日本はこれに対する備えは十分なのだろうか?普段の生活ではなかなか想像もしないことであるからこそ、一番身近な国で起こってしまった今、自国で起きたと仮定してみることは決して無駄ではない。地震の専門家だけが考えるのでなく。国民は政府に守ってもらうだけでなく、自らの安全保障について考えることが必要ではないだろうか?           阿久根 佳奈子

発行者:宮原信孝
 九州筑紫21世紀研究会代表世話人
 「フィリピンで英語を学ぼう!」企画実行委員会代表
 連絡先:久留米大学文学部宮原信孝研究室
     839-0851久留米市御井町1635
     TEL:0942-43-4411 FAX:0942-43-4797
     Email:abuakiranyes@aol.com
ブログ:miyaharanobutaka.com

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