2008年07月14日

杜若7月号(No.9)

杜若7月号です。

 最近、ブログを更新していないと、学生からの指摘がありました。まだ編集中ではありますが、原稿はありますので、とりあえず、ブログに掲載します。
 「杜若ポッドキャスト」を始めました。castalia社のホームページやiTunes Storeのニュース政治の欄からダウンロードして聞くことができます。しゃべり方は下手で眠たくなる時もありますが、時にはいいことも言っていますので、試しに聞いてみてください。これまで16作品(どれも6-8分程度)を収録し、今週は5本が追加アップロードされ、収録分すべてを聞くことができるようになります。電子Bookもあるようです。文字の方が良い方はそちらをどうぞ。

目次
ホットけない世界の問題:「国家のミーイズムを打ち破れるのか」
九州発:「ドバイと佐賀牛」
コラム:「北海道洞爺湖サミットと久留米大生」
世界の国から:韓国、中国、アフガニスタン、ドバイ、ベトナム
お知らせ:杜若ポッドキャストの配信開始、杜若企画編集委員会の拡充、日程

ホットけない世界の問題「国家のミーイズムを打ち破れるのか」

(本稿は7月7日に書きました。)
北海道洞爺湖サミットが始まった。G8サミットではあるが、22カ国の首脳が参加し、地球温暖化、貧困・開発、資源・エネルギーなどの問題を話し合うと報道されている。また、だから議長として議論の舵取りを行う福田総理の手腕が問われるとする一方、地球的課題が増え、その解決のために必要な利害関係国も増えたため成果は期待薄という論調も目立つ。
7月6日付の日経新聞「中外時評」は、世界はミーイズム(「自分さえよければ、という自己中心主義」)に染まっており、サミットの参加国を増やしても「小田原評定」になりがちでうまくいきそうもなく、サミットとは別に、自己中心的でない国々同士で絆を深め、「非ミーイズム連合」が力をあわせて、米国や中国などに友邦の圧力(ピア・プレッシャー)をかけ続ければ、世界はかなり変わりうるのではないか、と提案している。実績として、欧州が先頭を走る温暖化問題、ノールウェーが音頭をとったクラスター爆弾禁止、カナダが旗振った対人地雷禁止を挙げて、限界はあるが、顔ぶれだけが立派なサミットに比べれば、より効果的ではないか、とも言っている。
「中外時評」の提案は、自ら認めるようにその効果は限定的で、地球的課題を取り扱う上で決定打とはならない。「ミーイズム」が批判されているが、そもそも主権国家を単位として成り立つ現代世界では、主権国家は自国の利害を基準に行動するのが当然であり、「ミーイズム」はその当然の結果だからだ。中小国であれば、大国を始めとする各国の利害やその関係を考えながら行動しなければ、自らの利害を損ねることになるので、「ミーイズム」に陥ることに慎重になりがちだが、大国は自国の力のみで行える余地が大きいので、あるいは中小国の利害を無視しても実行できるので、「ミーイズム」に陥りだすと歯止めが利かないと感じられるほどだ。
米国が北朝鮮をテロ支援国家リストからはずす手続きに入ったという事件は、「ミーイズム」が自国の利害確保から、政権の利害(というより歴史に名を残したいという、または汚名ばかり残したくないという権力者の個人的都合)確保にまで至った最たる例だ。次に政権を担うはずの米大統領候補者たちも深く考えずに、その行動に手を貸している。
これではお先真っ暗である。希望はないのか。
貧困削減で英国が、地球温暖化でドイツが、クラスター爆弾禁止でノールウェーが、対人地雷禁止でカナダがリーダーシップをとれたのはなぜか。これらの国の政府や国民が「志」が高いからか。これらの国では市民の力が強い。これらの問題の解決を現場で実践してきた市民団体・国際NGOなどの発言力は強く、専門的と能力と課題へ向けた政策を作り出す能力を持った人材も輩出している。彼らが自国の政府に影響を与え政府とともに(時には政府の中に入って)これら地球的課題の対策を打ち出してきている。
 国家の「ミーイズム」を打ち破り、効果的な地球的課題対策を打ち出すには、米国等大国も含めた各国が市民の力によって変わっていくしかないのではないか。これも、日本の状況を見たり、市民社会化が進んでいない、あるいは進みそうもない諸国の多いのを考えたりすると、道のりは長そうではあるが。

九州発「ドバイと佐賀牛」

 佐賀県は、佐賀牛のドバイ進出を検討している。ドバイでは、何であっても最高級品を求める市場が成立している。佐賀牛がブランドを確立できれば、その市場で求められる可能性は大である。ある日系企業のドバイ駐在員は、「今ドバイでは、魅力ある接待の場所が見つからない。レストランであれば、最高級のフレンチもイタリアンもあるが、もうあたりまえになりすぎて、魅力を感じない。」と言う。佐賀牛が、魅力的な接待場所の目玉になるようであれば、佐賀牛の卸先も広がる。
 問題は、肉牛のハラ―ル処理である。ドバイは中東のイスラム教国であり、すべての食肉は自国産であろうが外国産であろうが、イスラム教の教えに則って処理されねばならない。しかし、佐賀牛のおいしさの秘密には、肉牛としての処理の仕方も含まれている。ドバイへの輸出用の肉だけ、イスラム教に則ってハラール化すればよい、と言うものでもない。私は、とりあえず、豪州やニュージーランドなど、古くからドバイ等イスラム諸国へ食肉を輸出している非イスラム諸国がどのような処理をしているのか、確認することを助言した。これらの国は大量の食肉を、自国を含む非イスラム諸国用とイスラム諸国用とに分けて処理しなければならない。これらの国のやり方を確認することで、イスラム教に則りながらも、佐賀牛の魅力を失わせないような方法が見つかるかもしれない。
 もう一つ。ドバイにある最高級品を求める市場が、食肉において何を求めているか、を良く突き止めてかかる必要がある。確かに佐賀牛は我々にとっておいしいが、ドバイの最高級品市場を支える人々が、我々日本人と同じ味覚であるとは限らない。彼らが、何をもって最高級品としての食肉を認めるのか、よく調査し、見極める必要があろう。
 いずれにしろ、佐賀県の心意気は素晴らしい。応援したい。

コラム「北海道洞爺湖サミットと久留米大生」
 
 (本稿は7月5日に書いたものです。)
 筆者の二人の久留米大学学生が、北海道洞爺湖サミットに合わせ現地に赴き、NGO(非政府組織)のネットワーク活動に合流・参加する。二人は5月の国際交流行事で知り合った市民団体のメンバーに勧められ、参加することにしたが、参加に当たっては、6月にサミット学習会を企画し、2回にわたりサミットの歴史やNGOの役割について議論し学んだ。7月14日には、その報告会も行う。
 筆者は、二人の心意気が予想外で嬉しく、学習会の講師も喜んで引き受けた。「予想外」というのは、久留米大学では、自らの関心や興味が自分の生活や趣味の範囲から出ないおとなしい学生が多いようで、外の世界に興味を持たそうといろいろと企画しても乗ってこないことが多かったからだ。日本の外で活躍する一流の日本人・外国人を連れてきても、話に感心はするが、だから自分が何か行動しよう、ということにはならなかった。
 二人は、現地で環境問題に取り組むNGOの活動に加わったり、貧困やエネルギーなどを考えるシンポジウムに出席したりするが、その知識や考え方のレベルはゼロに近く、議論に参加できず、周りの意見や年長者の指示に従うだけになるかもしれない。しかし、それでも得るものは、大学の中でじっとしているよりは大きいはずだ。また、国際社会の現場をみることで、自らの日常の外の世界へと視野を広げていくことができるだろう。
 彼らの成長と彼らに続くものが多数出てくることを期待している。

世界の国から

○ 金賢明在福岡大韓民国総領事:「私にとっては、任国(九州・沖縄)を愛することが、国を愛することです。」(6/11)
○ 隈丸前在上海日本国総領事:(ある日系企業の中国進出の困難について説明したのに対して)「中国での事業は至る所に思わぬ落とし穴や地雷がありますので、どうぞ慎重に石橋を叩きながらおすすめ下さい。」(6/20)
○ アフガニスタン南部よりの情報:「我々は治安計画を作成した。この計画は、アフガニスタン南部部族の指導者、アフガニスタンとパキスタンおよびイランの国境近辺を牛耳る部族によって作られ、地域すべてのコミュニティによって密かに支持されている。」(5/19)
○ 金田木綿子三菱商事ドバイ支社職員:「ドバイのホテルの件ですが、最近の値上がりは目に余るものがあり、頭痛の種となっております。・・・ドバイは既に45度を超え、益々暑くなってきました。」(6/22)
○ 板東あけみ「ベトナムの子ども達を支援する会」事務局長:(母子健康手帳の普及に関し、約10年前草の根無償資金で2村に同手帳を導入したベトナム北部山岳地帯にあるハーザン省の様子を説明する中で)「昔は昼食休憩を含めて8時間ほどかかったハーザン省行きも道路事情の改善で5時間で行きますので朝早めに出たら昼食はハーザン省でとれるようになりました。」(6/26)

お知らせ

○ 杜若ポッドキャストの配信開始
 前号でお知らせすべきでしたが、この5月よりポッドキャストで世界、特に中東の問題についての私の見方を、配信してもらえるようになりました。配信元のcastliaのホームページを開いてそこで「杜若ポッドキャスト」に接続するか、直接iTunes Storeの日本語版ニュース・政治部門から接続するかで、ご自宅のパソコンから聴取したり、iPod等の携帯機材にダウンロードしたりすることができます。
これまでのタイトルと7月配信予定の5本の仮タイトル(編集者との相談で変更する可能性あり)は、次のとおりです。
・ 5月配信分
001:宮原信孝と申します
002:生活に無関係でない中東を知ろう
003:歴史で紐解くアブダビ、ドバイ
004:エルサレムと久留米、どちらが危険?
005:なぜアフガニスタンが復興しないのか?
・ 6月配信分
緊急増刊号:イラン人質解放に関して
006:「今さら」始まる自衛隊のアフガニスタン支援
007:アフガニスタンへの国際介入の意味を問う
008:なぜこうなったのか?−アフガニスタンの国柄
009:なぜこうなったのか?−国際介入メニュー
010:現地の人々の支持を得よ!−「人間の安全保障」
・ 7月配信分
011:「現代の世界」を見る見方−ミーイズムの克服?!
012:核実験停止よりEU加盟
013:誰も守ってくれない−占領下のパレスチナ人
014:主権国家を持つことが、イスラエルの生存権を守ること
015:イスラムの土地にユダヤの家を建てる和平に向けて

○ 杜若企画編集委員会の拡充
 7月より新たなメンバーが加わり、杜若編集のみならず、国際問題、地方と世界の問題などについて研究・調査も行います。研究・調査は、杜若の月報や特報で紹介できるようになれれば、と期待しています。

○ 日程
7月14日(月)19:00-20:45:「北海道洞爺湖サミット」NGO会議に参加して
        (by久留米大学文学部学生2名)<於「久留米市民活動サポートセンター」(久留米市六ツ        門町井筒屋デパート・アーケード街入り口正面1階)
7月18日(金)18:30-20:30:「現代世界と久留米−保健・医療」(宮原信孝)
              <於「六ツ門大学」(上記久留米市民活動サポートセンター2階)>
8月18日(月)〜9月1日(月):
        「フィリピンで英語を学ぼう!」異文化体験実習(久留米大学学生・宮原付き添い)

trackbacks

trackbackURL:

comments

comment form

(宮原信孝ブログサイト(Miyahara, Nobutaka's Blog) にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

comment form