2008年08月28日
アフガニスタン邦人(伊藤和也氏)殺害
産経新聞にも書きましたが、伊藤和也さんの殺害を踏まえて状況分析を書いてみました。伊藤和也さんのご冥福とダラエンヌールの人々がこれに負けずに自分たちの生活を自分たちの手で築いていくこと(きっとこれが伊藤さんが本当に望んだことのはず)をお祈り致します。
26日現地時間早朝4人組の武装集団にペシャワール会の農業指導者伊藤和也さんが、アフガニスタン東部ナンガルハール州北部ダラエンヌールで誘拐されて様々な報道がなされたが、27日日本時間午後には伊藤さんと思われる遺体が見つかったとの報道が伝わった。もし本当に遺体が伊藤さんのものなら、殺されるまでなんと早いことか、と思う。
犯人は武装集団と言うが、アフガニスタンでは2004年に正式に軍隊と警察、他に政府許可を受けたもの以外の集団の武装は非合法とされた。従って、犯人は誘拐をする前から犯罪者である。これら非合法武装集団は、自ら盗賊化するか、麻薬業者に雇われるか、現地の有力者に密かに雇われるかして糊口をしのぐ。これに加え、タリバーン等の反政府勢力の一部隊の可能性もゼロではない。
自ら盗賊化した場合は身代金狙いで誘拐を行うが、普通はアフガン人金持ちを狙う。麻薬業者や現地の有力者に雇われて今回の事件を起こした場合とタリバーン等の反政府勢力自身が事件を起こした場合は、政治性を帯びる。
過去20年以上の間ペシャワールとダラエンヌールでペシャワール会は素晴らしい人道支援を行ってきた。医療サービスを行い、井戸を掘り、灌漑用水路を建設し6000haの農業用地を作り出した。ペシャワール会のワーカーたちは、現地の人々同じ生活をし、現地の人たちとともにこれらのものを作り上げてきた。その結果、ダラエンヌールの人々の信頼は最高に高まっていたに違いない。
現在、アフガニスタンは、人々の生命の安全と生活の向上が保証されていない状態である。反政府勢力との戦闘が続く一方、多くのアフガン人にとっての生業である農業牧畜は振るわず生活は苦しい。政府と国際社会はそのような人々の生活改善に結果を出していない。他に頼れるものがあれば頼りたいと思うのが人情だ。そのような人々の心につけ込んで勢力を伸ばしているのが反政府勢力であり、麻薬業者であり、地元での影響力伸張を狙う有力者たちだ。
このような中、ダラエンヌールは、ペシャワール会の指導は受けるが、政府からも、反政府勢力からも、麻薬業者からも、有力者からも隔離された理想郷になっていたと想像される。政府としては、現状では反政府勢力が浸透しない地域として黙認するかもしれないが、内心自らの制御が及ばないことは腹立たしい。特に政府内でこの地域にかかわりの深い有力者はそう思うかもしれない。反政府勢力としては、政府と戦う上で、逃げ場と食料と兵士を提供してくれる場所として影響下にあればうってつけである。カブール攻撃の戦略上も重要である。麻薬業者からすれば、麻薬栽培を農民にさせる適地である。筆者は2004年3月にこの地区近辺の幹線道路から見える場所でケシが栽培されているのを見たことがある。ダラエンヌールはそこから山間部に入ったところにあり、隠れて栽培するのに理想的である。地元の有力者としてもその広大な農地とそこで暮す人々に影響力を及ぼすことができれば多大な利益を得られる。
これらの勢力からすれば、ダラエンヌールの農地と人々に尊敬され影響力を及ぼし、農民たちにケシ栽培をさせず、自らの土地を有力者から奪われないように励まし、更にはダラエンヌールが政府・国際軍対反政府勢力の争いに巻き込まれないようにどちらにも味方させないよう指導するペシャワール会は目障りだ。ダラエンヌールからペシャワール会を追い出し、ダラエンヌールの人々に自らの勢力の力を見せつければ、豊かになった土地と人々、或いは戦略的拠点を自分たちの勢力下における。
このように考えてくると、伊藤さんはどの勢力かはわからないが、ペシャワール会とダラエンヌールの人々への脅しのために誘拐されたとしか思えない。殺されたのは、脅しが究極に達したからか。或いは、ダラエンヌールの人々の追及に恐れをなして身軽になるためにそうしたのか。いずれにしろ、もしそうだとしたら、なんと邪悪な心で純粋な命を奪ったものか、と思わざるを得ない。
- by Miyahara
- at 13:49
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