2008年10月27日
アフガニスタン、今こそ国際戦略の転換を!
一ヶ月ほど前に、海外向けに発表する1研究者としての意見を、アフガニスタンへの国際介入に関して書いた。しかし、中身に問題があるのだろう、なかなか審査が進まず、せっかく書いた原稿がたな晒しにあっている。
今、アフガニスタンへの国際介入の仕方について、英国、仏国、カナダ、オランダなど国際治安部隊に自国軍を派遣している諸国から公にではないにしろ疑問が呈されている。これら諸国は、アフガニスタン反政府軍が並行政府を築き上げているとまで言われるほど多大な影響力を及ぼしている同国南部・南東部に自国軍を展開し多数の死者を含む大きな犠牲を出していて、一方で国内世論は撤退を主張し、他方で米国からの要請で軍をアフガニスタンに維持展開する必要と様々な作戦を行ってきたにもかかわらず将来・現在の事態の改善が見とおせない、という板ばさみにあっている。
翻って日本では、インド洋の国際艦隊への燃料補給の是非ばかりが議論されているが、断片的な報道から見られるように、自衛隊のアフガニスタン本土への展開(たとえばヘリコプターによるアフガン国内補給や医療部隊の派遣)や軍への財政支援(報道では200億ドル)が米国から要請されている。
アフガニスタンへの国際介入のあり方・枠組みは米国が主導して作られ、その枠内で国際社会が組織・国の特色・能力に合わせて貢献してきた。今、米国は、一時的な軍事力の増強で治安を回復し、事態を改善しようとしており、このまま行けば、欧州諸国や日本への一層の貢献圧力が強まるであろう。
しかし、9.11.以来この7年間、ずっと軍事力による治安回復解決を図ってきたが、治安は良くなるどころか、悪くなっている。一時的な軍事力の増強で永続的な治安改善に向かうとは思えない。
国際社会は、米国の主導の下でアフガニスタンへの国際介入のあり方・枠組みを変更すべきだ。この変更は米国の力がなければ不可能である。米国がまだ過去の思考にとらわれているようであれば、すでに現在のやり方に疑問を呈している欧州と日本が手を組んで、米国を説得すべきだ。幸い、米国は政権が変わる時期だ。変化と結果を第一に考えるはずだ。
以下は、国際介入の戦略転換とその方策を訴えた一文である。具体策については異論もあるであろうが、要は、「アフガン国民を味方につけよ」ということであり、それができるのであれば、どのような具体策も検討に値することを先に申し述べる。
Global war on terror の焦点は、アフガニスタンにあり、軍の増派でそれを解決すべき、という意見が、オバマ米大統領候補を含む米国指導者の意見となっている。しかし、このやり方は、アフガニスタンの治安問題の解決にも、GWOTの勝利への直接的回答にもならない。アフガニスタン・パキスタン国境付近の軍事力増強とパキスタンへの越境攻撃を行っても、地域の住民の反発の下テロの精神と組織は残存し、パキスタン内政の混迷を増やすのみである。
確かに、パキスタンが、タリバンとアル・カーイダに再生とアフガニスタンへの浸透、南部・南東部における並行政府の樹立を許す一方の原因になっている。しかし、そこに至る7年の間、アフガニスタン政府が国民の命の生活の安全、つまり人間の安全保障をもたらすことができず、国民の信頼を失い、米国とNATO軍の反政府軍への攻撃が国民の不満をさらに深めたことを見逃すべきでない。
2003年8月、当時のユースフ・パシュトゥーン・カンダハール州知事は、「南部地域治安悪化の理由の半分は政府がこれまで地方を無視してきたことであり、残りの半分はパキスタンがタリバンの再生とアフガニスタンへの侵入を許していることである。もし政府が地方の復興に成功すれば、治安悪化の理由の半分は消え、タリバンの影響も10%か20%に減少するであろう。」と筆者に言った。
アフガニスタン政府とそれを支援する国際社会は、過去5年間、この州知事の考えに反し、地方の復興に失敗した。治安は年々悪化し、地方の住民の命と暮らしは無視され続けている。
最近のワシントン・ポスト紙の報道(9・20)によれば、首都カブールに南接するワルダック、ロガール両州には、タリバンによる並行政府が樹立され、効果的に同州住民を治めているという。これらの州より南の諸州は既に2年前から並行政府が樹立されていた。
以上の結果は、パキスタンがタリバンの再生とアフガニスタンへの侵入を許したから生じた、というよりも、政府と国際社会が、地方が無視され続けてきた状態に適切に対処せず、地方をタリバンへの支持へと向けさせたから生まれたというべきだ。米軍やNATO軍の増強は、誤爆や現地文化無視の捜索などにより、反政府・反米・反国際社会という国民の傾向を助長しただけになっている。
国際社会は、アフガニスタンにおけるGWOTへのアプローチを変えるべきだ。アフガン国民の命と暮らしの安全の保護と能力強化、つまり同国民の「人間の安全保障」を第一に考え、国民にサービスと安全を第一義的に提供すべきアフガニスタン政府の能力を強化し、NATO軍の治安維持活動および国際社会の人道復興支援が同政府の能力強化と活動を後方から支援するという体制に改めるべきだ。
筆者を含むアフガニスタン支援の経験をもつ数名は、最近、アフガニスタンへの国際介入について検討(review)し、地方に住む住民の「人間の安全保障」確立を第一優先事項として国際支援のあり方を変更することを提案した。提案の骨子は、地方の村落(communities)に視点を置きつつ、社会秩序を回復し、持続可能な生業を生み出し、国民和解を推進し、外国からの干渉を最小限に抑えていく、というものである。
地方の村落に視点を置く、とは、村落に住むアフガン国民の命と暮らしの安全を保障する努力をすることである。命の安全のためには、社会秩序を回復しなければならず、そのためには、村落の中の伝統的秩序を尊重しつつ、政府が治安と行政に関わる村落の努力を支援することが必要である。暮らしを成り立たせるため、農業や牧畜などの生業の確立と、そのための環境整備を行う必要がある。政府は、村落の努力を支援し、環境整備を行う役割を果たすべきだ。
以上を行うにはアフガニスタン政府は中央も地方も能力的に極めて弱体であるし、腐敗もある。政府の能力強化と腐敗一掃は急務である。しかし、政府の能力が弱体だからといって、この7年間行われてきたようにアフガン政府に代わって国際社会が実質的に行政を司るということがあってはならない。アフガニスタンのオーナーシップを尊重すべきだ。
このように村落中心の復興を進めようとしても、アフガン国民間の真の和解がなければ、実施困難となるであろう。ボン合意は、タリバン抜きで行われた。タリバンは追い出され、タリバンが代表すべき国民もいなかったからだ。今、タリバンは、南部・南東部の村落の住民を効果的に支配している。言うなれば、アフガン国民の亀裂は、政府と村落住民間で起こっている。真の和解のためには、タリバンを含む村落と政府の間でその努力が行わなければならない。
以上を進める上で外国からの干渉は、大きな障害だ。社会秩序を回復し、村落の成員が生業を持ち、これがなるように政府が能力を強化するために、外国個々が自らの利益のため、全部、一部に干渉することを、なくすべきだ。国際社会側は、統一戦線を築き、その統一戦線がアフガニスタン政府を支援するという体制を再構築すべきである。そうすれば、パキスタンの問題もより効果的に対処できるであろう。
この提案は、国際社会側の対応が変わらなければ絵に描いたもちである。国際社会は、アフガニスタンにおいても、パキスタンにおいても、地方の住民が命と暮らしの安全を脅かされ、その安全を少しでも高めるため、合理的にタリバンを選択していることを理解し、地方の村落に住む人々の「人間の安全保障」を確立するための支援体制変更を行うべきである。
- by Miyahara
- at 14:20
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